式典が終了し、いよいよ、「男はつらいよ」第一作の上映開始です。
スクリーンに映像が浮かび、会場に拍手とワーッという歓声が起こります。モノクロ映像で映し出される満開の桜や柴又帝釈天、水元公園の風景に重なる車寅次郎のナレーション・・・。

「桜が咲いております。・・・思い起こせば20年前、・・・プイっと家をおん出て、一生帰らねえ覚悟でおりましたものの・・・。そうです、私の故郷と申しますのは葛飾の柴又でございます」。

「男はつらいよ」の映画タイトルが映し出され、「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい、・・・。」との決め台詞とテーマ曲が流れると、また大歓声と拍手が沸き起こります。
  男はつらいよ屋外上映を待つ観客

映画「男はつらいよ」は、1968年から1969年まで放映されたテレビドラマ「男はつらいよ」で最後に不慮の死を遂げてしまった寅次郎に対し、視聴者から抗議が殺到したことから映画化されたということです。
後の映画「男はつらいよ」シリーズの定型ともなったストーリー展開が確立されている完成度の高い作品です。
  ストーリーは、「フーテンの寅」こと車寅次郎が、20年ぶりに生まれ故郷の柴又に帰ってきたことで、腹違いの妹さくらや叔父夫婦、柴又の人達との間で巻き起こるドタバタを始め、寅さんの恋(帝釈天の御前さまの娘 冬子)、さくらのお見合いと印刷工場の職工・諏訪博との結婚・満男の誕生など、盛りだくさんに展開します。

上映中は、寅さんの可笑しさに馴染みある大人だけでなく、小さなこどもも手をたたいて一緒に大笑いしていることに、今更ながら驚きました。
普段は慎ましく真面目に平穏に暮らしているであろう人達の中に、寅さんが突然ポンッと現れることで、さざ波が起こり、やがて大波にまでなって、ドタバタが繰り広げられます。
大の大人達が寅さんを中心にして、家族ばかりか、他人まで巻き込んで、皆で口喧嘩をしたり、大騒ぎをしたり。映画に出てくる大人達のそんなドタバタ振りは、今では滅多に見られない光景なので、子ども達にとっては新鮮で、とても可笑しなものかもしれません。
  そして、寅さんの「結構毛だらけ猫灰だらけ。尻の周りは・・・」など、ちょっと下品な馴染みの口上も、子ども達に大ウケです。
また、ゴルフボールがカップに入る手前で拾い上げてゴルファーに投げ返してしまう、床のバケツに『ドンガラガッシャーン』と派手な音をたててつまずく、階段を登る時や押し入れから出る時に頭をぶつける、慣れないナイフとフョークで皿の上の食べ物を飛ばして向かいの人の顔に当ててしまう、汚れたタオルで拭いて顔が真っ黒になるなど、古典的ともいえるギャグは、もう堪りません。それも、とくにシリアスな場面の後に絶妙の間(ま)で挟まれるギャグは、何度見ても思わず笑ってしまいます。

映画「男はつらいよ」は、映っている日本の風景も魅力です。
柴又帝釈天や江戸川、水元公園などの柴又周辺や、寅さんが旅する先々の風景や人々の風情。映画に映るそれらは、CG合成で製作される昔風の映画とは違って、紛れもなく撮影当時の本物の光景なのです。
  映画「男はつらいよ」は、製作された1969年から1995年迄の時代が焼き付けられており、時代の移り変わりの中で、我々日本人が得たもの、失ったものが見えてくる貴重なタイムカプセルといえるかもしれません。

同じ時と場所で、同じ映画を見て、観客みんなと共に大声で笑い、拍手し、時には切なくしんみりとし、感動や体験を共有できたという感覚は、久しぶりのような気がします。
開放感ある空間で、映画を見ることが、こんなにも素敵なものかと、そして、この環境で大勢の観客と寅さんの映画を見て大笑いできることが、こんなにも楽しいものかと、改めて映画の楽しさを感じました。

葛飾区や題経寺、松竹株式会社、柴又神明会はじめ、今回の催しを実現してくださった関係者の皆さん、そして柴又帝釈天近隣の皆さん、本当にありがとうございました。
ぜひ、このような機会を再度、いや何度でも実現させてください。また、寅さんが生まれ故郷「柴又」に帰ってくるのを待っています。
(2008年8月27日)

「男はつらいよ」野外上映会|123
  柴又帝釈天の夜景
 

葛飾柴又瓦版帝釈天参道柴又帝釈天庚申アクセスと周辺案内行事葛飾花だより 堀切菖蒲園寅さんの夕べ
寅さんを送る夕べ:寅さん列車帝釈天参道献花セレモニー渥美清さん13回忌献花式
「男はつらいよ」野外上映会 123