米国におされて、特許審査促進の約束をして(前川リポート)、特許庁は様々な改革を行っている。その大きな目玉は、電子出願制度である。特許、実用新案等にすでに導入され、今年からパソコン出願もできるようになった。
ところが、その改革に反するように、国民の発明意欲がだんだん無くなっていくような気がしてならない。特許庁は、数年前から企業の特許担当者を集めて、出願の減少化を呼びかけ、審査のコンピュータ化を図った。出願件数も減り、審査も早くなって目的を達しようとしている。しかし、これで本当にいいのだろうか。発明にはムダな出願が必要である。ムダな延長線状に偉大な発明が生まれていく。
米国では個人発明家の出願は通常(790ドル)の1/2の費用で済む。個人にやさしい風土がベンチャー企業を育てているのである。さらに1995年から、「仮出願」制度を導入して、特許出願という権利意識を高める政策を打ち出したことは注目すべきことである。仮出願制度は、個人にとって出願料がきわめて安いことが特徴である。通常の約1/10という金額 (75ドル)である。簡単な手続きをして、1年後に正式な特許出願をすればよく、仮出願によって新規性の確保ができることが大きな特徴である。
我が国、特許庁もそろそろ市民サイドの発想にたって、米国特許庁のように、個人が出願をしやすい方向で改革を進めてもらいたい。無資源国日本は、「出願インフレ」化を図り、ベンチャー企業育成に力を注ぐ政策に転換してゆくことが活力の源になるのでは、と思うのだが。