米国では、出願公開制度がなかったが、今年は、出願から18ヵ月後に、日本と同様、出願内容が自動的に公開される出願公開制度が導入されるらしい。導入にあたっては、個人や中小企業の出願は公開されない、という例外規定をとり、個人発明家を尊重する。

特許出願には、先発明者主義と先願主義とがある。先発明者主義は、最も早く発明を完成した者に権利を付与する、という制度に対し、先願主義は、最も早く特許庁に出願した人に権利を付与する、という制度である。日本をはじめとする諸外国は、先願主義を採用し、世界共通の特許制度の枠組みとして米国に先願主義の採用を迫っている。昨年11月、米国のレーマン特許商標庁長官が来日し、記者団の質問に答えた。以下は記者とのやりとりから。

米国は独自の先発明主義から、いつ世界標準の先願主義に変更するのか
「先願主義の方が手続き面から効率的で、IBM等、大企業も見直しを求めている。しかし、個人や中小企業は高額な弁護士を雇って迅速に特許出願することが難しい。先願主義にすれば、個人発明家等が不利益になる、との意見が根強く議会も同情的だ。したがって、先願主義に変更する気はない。」との答え。驚くほど明確な個人発明家尊重の意識である。これに対し、日本の特許制度は、米国のような個人発明家尊重意識は欠落しているといっていい。

これからは、発明学会が中心になり、「米国に見習い、個人の出願料は半額にせよ」というような個人発明家重視政策の提案を、もっと行わなければならない。ハイテク時代の中でも、個人の発明意欲が新技術の開発に結び付いていくのである。最初は小さな種火でも、やがて大きな火になることを願って、特許制度改革の草の根運動を起こそう。