日本提案活動協会主催の洋上研修で、名古屋と苫小牧間の往復4泊5日の指導にでかけたときのことである。この船の大脇啓志船長に「私も職務関連で5件ばかり発明したんですよ」と話かけられて、すっかり親しくなった。大脇船長の最近のヒット発明は、フェリーで運搬するトラック等が波の揺れで動かないように、デッキに固定しておく金具である。(写真)
従来の移動防止方法は、ウェッジというくさび型の枕をタイヤの前後に置いて、タイヤを挟むように固定。そのうえでタイヤの両側からゴムベルトを巻いて、ウェッジが動かないようにしていた。(上図)
「約200台積んでいるトラックの下に、作業員がもぐり込んで2人がかりでゴムベルトを巻くので、手間がかかる仕事になるんです」と、この苦労をみかねた大脇船長は、改良に取り組んだ。
大脇船長が目を付けたのは、前後2輪ついている大型トラックの後輪の前輪と後輪の間で、ウェッジ2個を前向きと後ろ向きにかませて、真ん中からジャッキで両側のウェッジを車輪に押しつけて固定するというもの。レバーをガチャガチャ上下させることで、二股の足を開拡させる方式の専用ジャッキを発明したのである。(下図)
これは軽いので1人で4〜5個持ち運べ、しかもワンタッチでウェッジに着脱でき、作業効率が格段に向上した。現在、太平洋フェリー(株)は、全フェリーで採用しているが、今まで2人がかりの作業が1人ですむので、人件費の節約効果は1年間に約3千万円にものぼるという。