今号から、商標法の一部改正の法律編について要点を説明していく。

1.一出願多区分制度の導入
従来、商標の出願は商品 (役務) の区分に基づいて、商標の使用をする一又は二以上の商品 (役務) を指定して商標ごとにしなければならなかった。したがって「勝利」という商標をビールや日本酒に使用したいという場合、商品区分ごとに

・第32類 指定商品 ビール とした商標登録願
・第33類 指定商品 日本酒 とした商標登録願

の二つの出願が必要であった。出願料は、21,000円の2倍、42,000円。

今回の改正では、商品区分が異なるからといって別々に出願することなく、一の商標登録願の中に

・第32類 指定商品 ビール とした商標登録願
・第33類 指定商品 日本酒 とした商標登録願

と記載できることになった。出願料は、一出願の基本料は6,000円、一区分につき15,000円。上記例では、6,000円(基本料) + 15,000 円(区分料) × 2(区分数)=36,000円。

複数の区分を指定した審査は、従来と同じように商標登録出願単位で行われ、商標登録出願にかかる指定商品 (指定役務) について拒絶理由があれば、その商標登録出願全体が拒絶されることとなる。このため、拒絶理由が存在しない他の指定商品 (指定役務) について商標登録を受けるためには、商標登録出願の分割が必要となる場合があるが、この場合は、別に21,000円の出願料が必要となる。

2.願書の出願人の業務記載の廃止
従来、「自己の業務に係わる商品 (役務) について使用をする商標」という要件を満たすために、願書には出願人の業務を記載しなければならない、としていた。

今回の改正では、願書の出願人の業務記載が廃止された。しかし、業務記載が廃止されても、商標登録出願に係わる商標が、「自己の業務に係わる商品 (役務) について使用をする商標」でなければ商標登録を受けることができないことは、いままでと同じである。したがって、

出願人 ○○事務器株式会社
第32類 指定商品 ビール とした場合

○○事務器株式会社がビールを製造販売することは一般的には考えられないので、業務を書かなくていいということであっても、拒絶の理由通知を受ける。