今号では、立体商標、写真による出願等の出願形式について説明する。

1.立体商標として出願できる背景
従来、商標は「文字、図形若くは記号若くはこれらの結合又はこれらと色彩の結合であって・・・」(商標法第2条第1項)と定義し、平面的なものだけが商標登録の対象になっていた。このため、広告用の人形や商品に付される立体物の立体的形状は、識別商標として機能しているにもかかわらず、商標法による保護を受けることはできず、周知(有名)なものに限り、不正競争防止法によって、保護されるにとどまっていた。しかし、欧米諸国ではすでに立体的形状であっても、立体商標として登録対象としているため、国際協調の観点から、平成9年4月1日より、立体商標の登録を認めることにした。

2.願書の形式
(1)願書は、「1.商標登録を受けようとする商標」の欄の後に「2.立体商標」の欄を加える。

3.立体商標を図で出願する場合

(1)1又は異なる2以上の方向から表示した図を明確に記載する。明確であれば、たとえば1の斜視図でもよい。


(2)2以上の図によって立体商標を表示する時は、各図は同一縮尺で記載し、各図の間には、十分な余白を設けること。
(3)図には陰影を表わすための細線又は濃淡、内容を説明するための指示線、符号等、商標を構成しないものを記載してはいけない。


(4)商標記載欄の大きさは、原則として8cm平方とする。

(5)記載ができないときは、15cm平方までの大きさとすることができる。

(4) (5) の場合、願書に枠線を引いて商標記載欄を設けるか、又は、その大きさの用紙を商標記載欄として用いて、願書に貼り付ける。

(6)異なる2以上の方向から表示した図によって記載する場合で特に必要があるときは、別のA4判の大きさの用紙(原則として1枚)に、枠線により商標記載欄を設けて記載することができる。



[例外的な立体商標出願の場合]


この場合、用紙の左に2cm、上に2cm右及び下に各3cmの余白をとり、上部余白部分に「商標登録を受けようとする商標」と記載し、容易に離脱しないようにとじ、願書の商標記載欄には、「別紙のとおり」と記載する。
4.立体商標を写真で出願する場合:
立体商標を出願するときに限り、図に代えて写真で出願することもできる。その際は、次の要領で作成する。
(1)写真の大きさは原則8cm平方とし、背景に他のものの入らないものであって、容易に変色又は退色しないものを用いる。ただし、とくに必要があるときは、15cm平方までの大きさのものを用いることができる。

(2)1のみ写真によって記載するときは、商標記載欄に、願書の記載事項が隠れず、かつ、容易に離脱しないように写真の全面を貼り付ける。

(3)写真は、折ってはならない。

(4)異なる2以上の方向から表示した写真 (各写真の大きさは15cm平方を超えてはならない) によって記載するときは、別のA4判の大きさの用紙 (原則として1枚) にそれぞれの写真が重ならないように十分な余白をとって表示する。この場合において、用紙の左に2cm、上に2cm、右および下に各3cmの余白をとり、上部余白部分に「登録商標を受けようとする商標」と記載し容易に離脱しないようにとじるものとし、願書の商標記載欄には「別紙のとおり」と記載する。


(5) 商標登録を受けようとする商標は、貼り合わせたものによって記載してはならない。

(6) 異なる2以上の方向から表示した写真によって立体商標を記載するときは、各写真を同一縮尺で記載し、各写真の間に十分に余白を設ける。

5. 立体商標として認められない例:
では、どんなものが立体商標として認められないのか。特許庁の資料によると、次の例が紹介されている。
(説明)立体的形状と平面標章(文字と星)によって構成されており、当該平面標章が立体的形状に係わる物の表面に貼り付けられたような態様で結合しているのではなく、分離した構成態様をもって結合しているため、全体としては三次元の物の外観を表示したものと認識することができない。

次号からは法律の改正について説明する。